タダシ君はいつも独りぼっち。
その日も公園で遊んでいました。
ふとブランコの方を見ると、同じ様に独りぼっちで遊んでいる男の子を見つけました。
「一緒に遊ぼうよ」
そう言って、タダシ君は男の子に話し掛けました。
すると、男の子は何も言わずに向こうの方へ駆けて行ってしまいました。
「せっかく遊ぼうと思ったのに」
がっかりしていると、男の子が突然こちらを振り返り、そっと手招きをしました。
誘われるがままに辿り着いた場所は、小さな砂場でした。
男の子は、砂に何かを書いています。
「何を描いてるの?」
タダシ君が覗くと、男の子は木の枝を持って、大きな車の絵、それから人の絵が2つ、そしてその人と人の間に小さな人の絵を描いていました。
男の子は人の絵を、木の枝で交互に指して何か喋っています。
「一体この子は何て言いたいんだろう」
タダシ君は、声の出ない男の子の口と木の枝の先をじっと見ました。そのうちに、2人の人はお父さんとお母さんであることが分かりました。
「じゃあ真ん中の子はこの人達の子供?」
タダシ君は男の子を真似して、真ん中の小さな人の絵を指しながら言いました。
すると、男の子はタダシ君を指差しました。
「これ、僕?じゃあこれは僕の父さんと母さんなんだね。でも、僕ん家に車はないよ」
すると突然、砂場に書いた車が、ゆっくりと、お父さんとお母さんとタダシ君の絵の描いてある方へ動き始めました。
「ダメ!ぶつかっちゃう!!」
そう言ってタダシ君は慌てて、砂場に書かれた車の絵を消そうとしましたが、いくら手で掻きむしっても車は消えません。
「ダメ…ぶつかるっ!」
突然辺りがとても輝いて、思わずタダシ君は目をつぶってしまいました。
どれくらいしたでしょう、そっと目を開けると、目の前にはお父さんとお母さんがいました。
「父さん!母さん!」
タダシ君は思いっきり走ってお母さんの胸に飛び込みました。
「もう大丈夫よ」
そう言って、お母さんはタダシ君の頭をそっと撫でました。
「あの男の子がね、砂場に絵を描いてね、それで…」
タダシ君が男の子を指差そうと振り向いた時、ふと体が浮いているのに気づきました。「父さん!体が浮いてるよ!空に向かってるよ!」
「そうだよ。これから3人で星になるんだ」
「コウイチ、帰るわよ。いつまで空見てるの、まったく…。あら、今日は星が綺麗ね。何か素敵なことでもあったのかしら」
そう言いながら、お母さんは僕のお尻に付いた砂を払いました。
「いつかまた一緒に遊ぼうね」
そう言って、僕はお母さんに手を引かれて公園をあとにしました。
いつの間にか、満天の星で一杯の夜でした。いつもより、星が3つ多く輝いていました。