辿り着く先は一体 何処になるのか
× [PR]上記の広告は3ヶ月以上新規記事投稿のないブログに表示されています。新しい記事を書く事で広告が消えます。 7月上旬、僕は大学生活を満喫していた。講義にアルバイト、サークル活動と、どれをとっても全てが新鮮で。高校卒業と同時に社会に入っていった同級 生達にはきっと社会勉強的なところで劣るのだろう、なんて思っていたのだけれど、大学進学を選択したからといって社会勉強が出来ない訳などなく、いやむし ろ彼らには味わう事の出来ない刺激的な出来事がそこら中に転がっている様な、むしろ、より社会勉強ができるのではないか、なんていう気持ちにさえなってい た。 PR
出発当日、僕は彼女の乗る電車と僕の乗って来た電車が交差する駅のホームにおり、彼女の来るのを待っていた。ラッシュの時間を少し過ぎたホームは、眩しい 光のせいで少し薄く目に映り、もういなくなってしまった人々の残したガムの紙くずにも光は反射して、僕の目を少しくらませた。
やって来た彼女はいつもと変わらずふんわりとした格好でふんわりとやって来た。 何を話す訳でもない、ただそこに2人たたずんだまま、電車が何本か目の前を通り過ぎた。3ヶ月会えなくなる、そんな実感はまるでなく、3日だけお付き合い をした2人が3ヶ月離ればなれ、なんていう無茶苦茶な展開にすら実感がないまま、ただ時間だけが過ぎていった。 「いってらっしゃい」 そう言って彼女は僕に水色の便箋を渡し、その次にやって来た電車に乗って、大学へと向かった。 新幹線に乗ってから、僕はホームで買ったお弁当とお茶をテーブルに広げ、名古屋までの2時間の旅を静かに楽しんでいた。これから訪れる世界は一体どれだけ 光に満ちているのだろう。大学進学にあたって両親ともめた事、進学出来るか出来ないか、いよいよもって危険に感じて朝から晩まで机に向かった事、周りには 友達のいない現実が待っているということ。今までのことやこれからの事が、もの凄い速さで県をまたぐ新幹線の中で、それに負けじと僕の頭の中を走り過ぎて いった。 もうすぐ東京と名古屋の真ん中辺り、土地にしていえば静岡辺りで、僕はポケットに入れていた便箋を取り出した。水色の便箋の表には、雲の浮かんだ青空の画 があって。宛名もなく、差出人もない、そんなシンプルな手紙の裏に貼ってあるシールをそっと剥がし、僕は手に取ってゆっくりと読み始めた。 手紙読んだよ。ありがとう。では、率直な意見を書いておきます。 ばか あほ まぬけ ふざけんじゃねー これが私の本音です。 私はそんなに浮ついた女じゃないから。これからお互い新しい生活が始まって、色々な刺激を受けると思う。楽しい事がいっぱいあると思う。辛い事がいっぱい あると思う。もし、辛い事があったら連絡して。渡しもメールする。電話する。手紙書く。 夏まで3ヶ月。夏には会えるよね。 あなたは寂しがり屋だからへこたれそうになるかも知れないけど、私はそんなあなたが好きです。 頑張って来い。 遠くから、見守ってます。 僕の大学生活が、静かに幕を開けた。 … とはいえ、現実的には何とも無茶苦茶な展開であったのには間違いなく。3月の末に想いを伝えたのは良かったのだけれども、僕は4月の3日には名古屋に行か なければならなかったのだから。 |