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辿り着く先は一体 何処になるのか

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  • 今宵はどこへ行こうかしら…
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    img_9748_24442866_0.jpg

    7月上旬、僕は大学生活を満喫していた。講義にアルバイト、サークル活動と、どれをとっても全てが新鮮で。高校卒業と同時に社会に入っていった同級 生達にはきっと社会勉強的なところで劣るのだろう、なんて思っていたのだけれど、大学進学を選択したからといって社会勉強が出来ない訳などなく、いやむし ろ彼らには味わう事の出来ない刺激的な出来事がそこら中に転がっている様な、むしろ、より社会勉強ができるのではないか、なんていう気持ちにさえなってい た。

    しかしながら恋に関してだけは無駄に踏ん張っている自分もいた。新入生を狙う魅力一杯の先輩、同期の可愛い女の子、果てはアルバイト先のおばさま達までも が、違う土地から来たということ、無駄に背が高いということ、標準語ということ、どれをとっても全てが偶然だというのに、決して今時の顔などしていないと いうのに、そんなところだけを見て僕に近寄ってくる。
    僕はそれを振り払い、ただひたすらに夏休みを待った。あとひと月もすれば彼女に会える。お互い活動の時間帯が違うのもあり、なかなか電話の出来ない日々が 何ヶ月も続いてはいたものの、それでも時々手紙を送り、手紙は届いていた。

    7月中旬のある日のことだった。夜も更けた頃に家に戻って玄関を開けると、それと同時に1枚の紙切れがひらりと足下に落ちた。拾い上げてそれを見ると、宅 配業者からの不在届けだった。
    次の日がちょうど休みだった僕は、紙切れ片手に郵便局へと足を運んだ。手紙一通にしては大き過ぎる段ボールを原付の足下に置いて、帰りにコンビニに寄って 飲み物を買い、エアコンなしではこたえる暑さの中、違う土地での初めての夏を体で感じながら、家に戻って早速段ボールを開封。

    中には、お気に入りのアーティストのCDと、PVクリップ集が入っているビデオテープ、それから水色の封筒に入った手紙だった。青空の様な色の封筒に、雲 の画はなかった。

    「こっちの大学で、好きな人が出来てしまいました」

    そう書かれた手紙は、今まで僕を支えていた何かを確実に崩し、僕はその場でただ動けずにいた。
    コンビニで買って口を開けられた炭酸飲料が、シワシワと小さく音を立てていた。
    エアコンの首がスィと動き、押し出される風の音が少し大きくなり、そして少し小さくなり。

    気づいたら外はもう夕方になっていた。日もだいぶ長くなった夏だというのに。

    …それから7年の月日が経ったある日、高校時代の友人が突然実家に顔を出し、小さな袋を置いていったとの話を親から聞き、僕は実家へと足を運んだ。
    中には、4つに折り畳まれた20cm程の紙が入っていた。
    「何だろう」
    そう思った僕は、実家に上がってそのまま客間に行き、折り畳まれた紙を開いた。

    気づいたら、両親が慌てふためいた顔で僕を見下ろしていた。母親の手にはティッシュペーパーがあった。
    僕はおんおん泣いていた。
    僕の大学生活の思い出が、ひとつ、ゆっくりと幕を下ろした。



    元気ですか。今はとりあえず生きています。この手紙を書いたのは19xx年3月31日。4月3日からは愛知へ行くという、ちょうどキリの良い時期なので す。
    7年後ということで、とりあえず外国へ行っている自分が、この手紙を読む為に帰国した、なんてオチがあると素晴らしいと思います。今は18歳です。精神的 にも段々大人へと近づいている子のご時世に、25歳の自分の素晴らしいまでの成長ぶりを期待しつつ、今よりも、より健康である事を祈っています。
    あ、どうせならついでに2つだけ。
    人に自慢出来る職業なんて期待してません。外国がらみの人生を送っていてください。
    それから、俺とあなたにしか分かんない話だけど、あいつとはどうなりましたか?これを埋めてから愛知に行くまでにちゃんとコくりましたか?まさか今も一緒 に読んでいたりなんかするのですか?ま、俺の事だ、フられちまっていることでしょう。でも、そうじゃなかったらいつか会えた時に、一緒に喜びましょう。も しそうじゃなかったら俺に八つ当たりしてください。一杯泣いてください。一杯一杯、泣いてください。
    でも、俺はあなたの側にいますから。
    18の俺に慰められている様ではダメだな。なんて、もうフられてるみたいな言い方でごめんなさい。
    とにかく、頑張ってください。ささやかな夢にも精一杯の想いを。

    19xx年3月31日AM1:07

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    img_9748_24385466_0.jpg
    出発当日、僕は彼女の乗る電車と僕の乗って来た電車が交差する駅のホームにおり、彼女の来るのを待っていた。ラッシュの時間を少し過ぎたホームは、眩しい 光のせいで少し薄く目に映り、もういなくなってしまった人々の残したガムの紙くずにも光は反射して、僕の目を少しくらませた。

    やって来た彼女はいつもと変わらずふんわりとした格好でふんわりとやって来た。
    何を話す訳でもない、ただそこに2人たたずんだまま、電車が何本か目の前を通り過ぎた。3ヶ月会えなくなる、そんな実感はまるでなく、3日だけお付き合い をした2人が3ヶ月離ればなれ、なんていう無茶苦茶な展開にすら実感がないまま、ただ時間だけが過ぎていった。
    「いってらっしゃい」
    そう言って彼女は僕に水色の便箋を渡し、その次にやって来た電車に乗って、大学へと向かった。

    新幹線に乗ってから、僕はホームで買ったお弁当とお茶をテーブルに広げ、名古屋までの2時間の旅を静かに楽しんでいた。これから訪れる世界は一体どれだけ 光に満ちているのだろう。大学進学にあたって両親ともめた事、進学出来るか出来ないか、いよいよもって危険に感じて朝から晩まで机に向かった事、周りには 友達のいない現実が待っているということ。今までのことやこれからの事が、もの凄い速さで県をまたぐ新幹線の中で、それに負けじと僕の頭の中を走り過ぎて いった。

    もうすぐ東京と名古屋の真ん中辺り、土地にしていえば静岡辺りで、僕はポケットに入れていた便箋を取り出した。水色の便箋の表には、雲の浮かんだ青空の画 があって。宛名もなく、差出人もない、そんなシンプルな手紙の裏に貼ってあるシールをそっと剥がし、僕は手に取ってゆっくりと読み始めた。

    手紙読んだよ。ありがとう。では、率直な意見を書いておきます。
    ばか
    あほ
    まぬけ
    ふざけんじゃねー
    これが私の本音です。
    私はそんなに浮ついた女じゃないから。これからお互い新しい生活が始まって、色々な刺激を受けると思う。楽しい事がいっぱいあると思う。辛い事がいっぱい あると思う。もし、辛い事があったら連絡して。渡しもメールする。電話する。手紙書く。
    夏まで3ヶ月。夏には会えるよね。
    あなたは寂しがり屋だからへこたれそうになるかも知れないけど、私はそんなあなたが好きです。
    頑張って来い。
    遠くから、見守ってます。

    僕の大学生活が、静かに幕を開けた。

    img_9748_24296901_0.jpg

    … とはいえ、現実的には何とも無茶苦茶な展開であったのには間違いなく。3月の末に想いを伝えたのは良かったのだけれども、僕は4月の3日には名古屋に行か なければならなかったのだから。

    お泊まり会から帰って来た次の日、月が変わって4月1日。残り2日の猶予を残してはいたものの、彼女は1日から大学生活が始まり、まるっとどこかへ遊びに 行って思い出作り、なんていう事は到底出来そうになく。
    それでも初めのうちはまだ講義も始まっておらず、空いた時間にあわせて僕は家を出、彼女と喫茶店でお茶をするくらいの時間はあり。話の内容といえば、一足 先に大学生活を始めた彼女の、大学に対する印象だとか、これからどうしようね、とか。時間だけが確実に過ぎていく、時間は人々に平等に与えられていないん じゃないかってくらいに、時はあっという間に過ぎ、そうしてさよならの時間がやって来て。

    出発前日。…っていっても実際は次の日なだけ。
    僕は彼女に手紙を渡すべく、大学帰りの彼女を呼び出し。少し走って来てくれたのか、息を切らしてお決まりの喫茶店に入って来た彼女は、2日目にして既に大 学生活を楽しんでいる様にも見え。

    これから僕らは、まるっきり違う環境で、まるっきり違う土地で、新たな生活といっぱい出会う事になるでしょう。喜んで、悲しんで、楽しんで、はにかんで、 そうやっていっぱい学んで、素敵な大人になっていく事でしょう。勿論恋だっていっぱいするに決まってる。
    だからせめて、カッコいい奴が現れてしまったら、そいつに色仕掛けをする前に、そいつに告白してされてしまう前に、告白してしまう前に、「カッコいい奴リ スト」を作って送ってください。顔だけで判断するのは何とも相手に失礼だけども、「さすがにこいつはやめて」的な人だったらちゃんと注意するので。

    彼女に渡した手紙はその場で読まれる事なく、その日も僕らは他愛もない話をして、そうしてまたさよならをして。これで彼女の顔をまともに見られるのは最 後、次に会えるのはきっと夏休み。春休みのうちから夏休みの事を考えたのは初めて。少し遅くなったお昼ご飯を家で食べていたら、テレビの向こうで「今日の 晩ご飯」的な番組を見てしまったくらいに、それはもう何とも不思議な気持ち。

    その日の夜に彼女と電話をしていたら、出発する日の時間によっては駅で会えるかも知れないということが分かって、僕はその時間に合わせて出発する事にし て。最寄りの駅はそれぞれ違うのだけど、その路線がちょうど交差する駅があって、そこで少しだけ会おうということになり。
    神様は残酷な奴。七夕の一件があって以来もう懲りたと思っていたのに、僕らにもこんな仕打ちをするんだもの。…なんて、自分達が決めた進路を神様のせいに したところで、そこまですっきりする事もなく。

     

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