年齢なんて気にしちゃいないが、それはあくまで俺個人の話。世間で30近い人間が新しく仕事をしようなんていうのはなかなか大変な事らしい。
そんな事を知ってか知らずか、というよりはもうどうしようもないという開き直りなのだが、普通に面接に行く事に。行った先で久し振りのまともな面接。生い 立ちを聞かれ、自分の人生について色々と話をし、職歴についても色々と根掘り葉掘り聞かれ、普通の人生を何とするのかは知らないが、決して教科書通りの人 生を送って来ていない俺の人生を、面接官は快く思っていない様子。だってほら、顔に出てるもん。
そんな雰囲気の中、「タイピングテストをしますから」なんていうセリフと同時に俺は奥の部屋へと移動。目の前にドンと構えた偉そうなデスクトップさん。俺 は心を持った健全な人間だというのに、これからお前を叩いた具合に酔って振り分けられてしまうのだろうな、それならばせめて、この瞬間だけ気持ち悪いくら いに両指さんが動いておくれ。そんな独り言が果たして面接官に、デスクトップさんに聞こえたのかどうだったのか、淡々と準備は整い、いざタイピングテスト へ。
どうやらこのテスト、変換は自動にしてくれるらしく、俺は画面に出た文をそのまま打ち込めば良いというだけの話、漢字の変換能力までは求められていない様 で。とはいえ文の中に書かれている漢字は読まなければならないのだけれども。
テストが終わり、面接をしていたところへ戻ると、面接官の態度が明らかにおかしい。
「すぐにでも働いて欲しい」
そう言われた後、俺は会社の概要、業務内容、今後の展開等を聞く事になり、気づけば勤務先の候補まで挙がっている始末。どうやら俺のタイピング、どうしよ うもないくらいまでに独学ではあったのだが、何とか使い物にはなるらしい。それならばせめてそれなりのリアクションをとってくれても良かったのに。たまに は俺も褒められたい。
結局、もう一つ面接の予定が入っていたので保留という形になり、それでも他を全部蹴られてしまった場合はそこで働かせてもらう事になる訳だが、今まで本当 に俺は社会というものを知らなさ過ぎたんだな、ということを改めて痛感し。だからどうだという訳ではない。だから世間に引け目を感じている訳でもない。た だ、知らなかった世界がこんな近くにも存在するのだなということ、それに驚いていたりなんかもして。
ま、いつまでも逃げている訳にもいかない。まだまだ折り返してもいないこの人生、たまにはどっぷり浸かってみるのも良いだろう。
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