その昔、今からもう7年か8年くらい前になるのか、父の姉にあたる伯母さんがこの世から去りました。別に今日がその日って訳でも何でもないんだけれども、 もしたまたまそうだったのなら本当に申し訳ないんだけれども、とにかくその昔にそんな日があって。
当時名古屋で大学生活を満喫(?)していた俺は、その話を聞いて一人父の実家のある兵庫県まで新幹線に乗って向かい。着いた先ではもはやお葬式ムード一 色。こんな言い方をしたら何とも楽しそうな雰囲気にも取られるか、そんな事はないか、葬式だもんな。
そこにいたのは俺の知っている伯母さんなんかではなく。四角いハコの中に閉じ込められて寝返り一つしない伯母さんは、顔の部分だけ蝶番仕様になっているそ のハコからしっかりと姿を見せ、とはいえ顔だけなんだけど、それはもう、今にも起き上がって「あら」なんて言ってきそうな程綺麗に化粧もされていて。身内 の死に直面するのが初めてだった俺は何も言葉が出てこず、ただただそこに用意されている食べ物をひたすら口に詰め込んでいた。
日が変わり、伯母さんは焼かれる事になりました。一通りの儀式が終わり出棺の準備が出来上がると、伯母さんはハコに入ったまま親戚に担がれ、黒くて大きな 車の後部座席へと乗せられました。爺ちゃんは顔色一つ変えず、婆ちゃんはもう干涸びてしまうんじゃないかってくらいに涙を流し。俺はそれでも何も出来ず、 ただただ添える様にハコを触っていました。
火葬場での出来事は今でも忘れません。火葬が終わるまでに30〜40分くらいかかると言われた様な気がしましたが、俺にはほんの数分の記憶しかなく。
終わって出て来た伯母さんの頭蓋骨には、朱色の血が付いていました。それを見つけた係の人は、何食わぬ顔をしたまま、手に持っていた火かき棒の様なもので そこら中をグチャグチャに崩していきました。あっという間の出来事でした。
帰り道、俺は時間の合間を縫って兵庫まで来たというのもあってその日のうちには名古屋に戻らねばならず、しかもお金がなかったので鈍行で帰る事になってい たのだけど、あまりの疲れと緊張ですぐに目を閉じてしまい。しかし見る夢は伯母さんの頭蓋骨についた朱色に染まった色の夢ばかり。
いてもたってもいられなくなった俺は、持って来ていたノートとペンを手に取り、ただひたすらに字を書き連ね。自宅に戻って俺はすぐさまそれを曲にして、そ の日の夜中に川べりを探して独り歌ったのです。
曲名を「骨に願いを」にして。
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