だから何だというのだ。俺は別に悪い事など何もしていない。たまたま困っていた人を助けたら、そいつが悪者だったってだけだ。それなのに共犯者扱いされて しまうなんて、世の中どうかしている。
絵に描いた様な大きな荷物を持ったお婆さんが、京都のど真ん中、スクランブルな交差点を歩いていただけ。前屈みというにも恐れ多い、もはや倒れてしまいそ うになるまで前傾姿勢で一歩を踏み出すそのお婆さんは何も悪くない。何よりそれだけの荷物を詰められた事に尊敬の意を示すべきなのだ。風呂敷は何処で買っ たのか、それすらも出てくる事のない謎なのだ。
俺には女兄弟がいないから、恋愛の手順なんてものは知らない、姉さんから恋のアドヴァイスをもらえることなんてない、女だから姉妹って言葉があるはずなの に、男兄弟女兄弟なんて言い方をしてしまう事自体が問題なのだ。女姉妹と言えば良い、ただそれだけの話だというのに、気づけば俺の両手にはしっかりと手 錠、鉄格子に囲まれてはや4年、俺が一体何をしたというのだ。
ポケットに指を突っ込んで、親指だけを出すのか親指だけを入れるのか、たったそれくらいの違いでしかないのに、近所付き合いなんてものはいつだって厄介な 事になるに決まっているのに、それでも一人で生きていけない人間の儚さは、いつまで経っても消えてしまう事などなく。
明日は夕方から雨なのだ。俺の心にも届いておくれ。
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