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  • 今宵はどこへ行こうかしら…
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    img_9748_23522300_0.jpg

    ついさっきまでやかましかった緞帳の向こう側がとたんに静かになり、それはもはや講師の先生達バンドを見終わった女子高生とおば様たちが席を立った後にも思 え。結局はこういうオチ、静まり返った体育館の中、俺と親友は響き渡るとてつもなくでかいホールの中で、気持ちよくも悲しく歌い尽くして去ろう、そう誓い 合った訳であります。

    さぁ、緞帳が上がりました。スポットライトが我等2人にドッと当たる。一瞬とも言わずしばらくの間目はくらみ、辺りは本当に何も見えない、客云々の前に此 処がどこなのかさえも分からないくらい、そんな、逆光の中、まさに逆境の中、スポットライトが一瞬それたほんの少しの間に潰れかけた目を凝らして当たりを 見回すと、なんとも信じられない数の見物客が体育館全体を覆いつくしていたのであります。

    講師の先生達バンドが演奏をしていたときは椅子が全部埋め尽くされていたのでありますが、我らの時はそんなもんではなく、立ち見の連中が肩をぶつけなが ら、なんだったら学校中の連中が見に来ているような、先生達も見に来ているような、そんな奇跡的な光景が目の前に広がっていたのです。

    ありえないタイミングでの笑みを必死に堪えながら、隣を見ると親友も同じような雰囲気で。ついさっきまでの緊張はどこへやら、ワクワクで一杯の現実に心は 舞い上がっていたのであります。

    「どうも、Hypocritesです」

    その一言は親友に譲りました。が、その一言の後に飛んできたそれはそれは恐ろしい黄色い声援に、少し後悔も覚え。
    とはいえまだ始まったばかり、何もしていないのに黄色い声援だけで満足してしまってはまるっきり意味がない、今日まで練習してきた結果をぶつけなければな らない訳で。

    1曲目は親友が歌い、次の曲は俺が歌い、その次の曲は2人で歌い。その当時にフォークソング的なスタンスでもって世間を賑わせているバンドはまだなく、そ んな中、バックにはドラムセットもアンプもスピーカーも完璧なまでに用意されているというのにも関わらず、俺と親友は折りたたみの椅子とマイクを4本だけ 使い。

    「俺らは今日、初ライブを無事に終えることが出来そうです。これも一重に皆さまのお陰です」
    まだまだMCをやめない親友がそう言うと、相も変わらず逆光で何も見えない真っ暗闇の中から、「おめでとー」だの「うれしー」だの、聞いたことのない声が そこらじゅうから飛んできて。さぁ、そろそろ俺も何か喋らないと。

    「実は、皆様に言っておかなければならない重大なお知らせがあります。我々は今日で解散となります」

    2人してそれなりにライブの運び方を考え、初ライブにして解散ライブ、という地味すぎる笑いを取りに走るべく考え出したこの台詞を任され、俺が万を持して マイク越しに発表した途端、思わぬ展開が我々を襲い。

    「やめないでー」

    こいつ等はもはやあほ以外の何者でもないな、と感じた瞬間でありました。

    とはいえそんなリアクションがあるとは思ってもいなかった2人は返す言葉もなく、そんなあほどもの言葉に返事一つ出来ない我々はもっとあほだった訳で。

    何とか無事にライブは終わり、講師の先生方からは「よかった」「かっこよかった」なんて褒め言葉をさんざいただき、我々の思い出もしっかりと作れたな、な んて思いながら自分たちの教室へ荷物を運んでいたその時です。

    「マネージャーにしてください」

    と、言い寄ってきた女子が4人。今思えばあのときに二つ返事で「はい」と言うべきだったのに、2人が同時に発した言葉は

    「いや…」

    でありました。

    大体にしてさっきのMCのリアクションですらまともに出来なかったというのに、まさかこんな展開を誰が予想したでありましょうか。我々にしてみれば精一杯 だったのです。

    後々の話では、その日以来俺と親友のグループのファンクラブが発足されたとか、俺個人のファンクラブまでもが発足されたとか、様々な噂が飛び交う中、俺と 親友はマイペースにその場を去り、それぞれがそれぞれに進路へ向けて勉強を始め、気付けば2人とも大学進学への切符を手に入れることになる訳であります。

    卒業式の日に2人で言った決め台詞は勿論

    「大学だけが人生じゃないんだよ」

    でありました。

     

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    11月某日、ついに文化祭がやってまいりました。文化祭の参加者が少ないとか、もはや生徒すらいないとか、そんな噂は何処へやら、こんなに入れませんか ら、くらいの人混み。元々人の多いところが得意でない俺からしてみればそこが既に地獄、緊張しなくても良いところから既に緊張していたりなんかもして。
    しかしながらここは資本主義国。人一人の緊張で延期になる様な配慮は一切されておらず、実際社会主義国の仕組みもどんなものか分かったものではありません が、とにかく祭は淡々と確実に進み、お昼もとうに過ぎたあたり、ついに我らが「Hypocrites」も出演するライブイベントが幕を開ける時がやって来 たのであります。

    先にも述べた様に、講師の先生達バンドは1バンド目。体育館のフロアが熱気に包まれているのは入ってすぐに感じました。まだ誰もステージに立っていないと いうのに、なんだったらまだ緞帳下りたままだっていうのにも関わらず、何故かフロアからは黄色い声援が飛び交い。
    入学式か卒業式か、そんな時くらいにしか並ばないであろう折りたたみの椅子が体育館のフロア一杯に敷き詰められており。それはきっと講師の先生達バンドと いうことでの客の入りを予想した実行委員側の配慮だったのでありましょう。そして期待を裏切る事のない満員御礼の人の入り。それはもはや生徒だけにとどま らず、違う学校の制服から、なんだったらお母さん達までが、目一杯粧しを決めて座っている始末。そう、講師はここだけで教えている訳ではなかったのであり ます。

    袖からステージの裏に回ると、そこではもう講師の先生達が各々準備を始めていました。科学の講師は実験用の服を身に纏い、数学の講師は何をせずともカッコ よく、とにかくもう祭られるにふさわしいメンツが、そろいも揃って楽器を弾けるという現実。緞帳の向こうでは一向に黄色い声が鳴り止まず、むしろ人は増え ている雰囲気。

    「ありがとう文化祭、さようなら青春」

    そう思いながら大人の凄さをまじまじと見せつけられ、我々は一度袖にはけ。間もなく緞帳は上がり、講師の先生達バンドが始まる訳です。
    売れ筋J-POPな曲を、講師のマドンナ的先生がつらつらと歌い、そしてそれは決して上手くなく、しかしながら客はもはや洗脳されているのか、尊敬の眼差 しで彼女らを見つめ。謎の新人ボーカルが、いとも簡単に人気者になってしまう訳だ、思い込みって怖い、そんな、ショックと感心な気持ちが交差しながら、確実に時間は進み。

    演奏する事30分程、本番前に生気を吸い取られてしまった我らを尻目に講師の先生達バンドは終わり、鳴り止まなさそうで何とか鳴り止んだ拍手とともに緞帳 が下り。

    さぁ、ついに「Hypocrites」の出番。下りた緞帳の向こうでは、確実に人々の動いている気配。緞帳のこっち側では「お疲れー♪」「お疲れしたー ♪」なんていう充実した声。俺と親友はコソコソと椅子をセンターに置き、位置を確かめ、動く人の音を向こう側に、ただ淡々と準備に勤しみ。

    緞帳が上がりました。
    「Hypocrites」、初ライブ、始動です。

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    高校3年の夏休みに活動を開始した我らが「Hypocrites」が、晴れの舞台に立つまでに残された時間はほんの1ヶ月程。しかも練習の出来る時間もか なり限定されており、何だかんだで予備校通いをしていた親友がそこに間に合うまでの時間だったり、俺が親に怪しまれずに帰宅出来る時間だったり、結局は昼 下がりから夕方までの間だったりもして。ま、十分といえば十分、やってやれない事はない展開ではあったのかも知れない。

    そんなこんなでいつの間にか時は経ち、気づけば有志バンドの申し込み期日が迫っていたりなんかもして。去年のコネを使い、ゴマをすりゴマをすり演奏させて もらえる状態にだけはしよう、なんて考えていたのにも関わらず、その年の後輩どもが何ともパッとせず、応募していたのは我らを含め3団体だけ。しかもその うちの1つは講師の先生達が組んだバンドらしいなんていう噂で。
    お陰で大したオーディションもなく演奏の出来る環境は整ったという事で、あとはとどめを刺すだけ。…なんて軽い気持ちで構えていたのが間違いだったという 事に気づくのは、まだまだ先の話。

    「講師の先生達がバンドを組んで文化祭で演奏をするんだって!」
    なんていう声がそこかしこから聞こえてくる様になったのはそれから間もなくの話。よくよく考えてみれば、講師の先生達というのはそもそもがカッコよかった り可愛かったり綺麗だったり、高校生の間ではとても人気のある人達だったのであります。そんな人気のメンバーがそろいも揃ってバンドなんかやろうものな ら、たちまち体育館は満員御礼、金でも取れば大黒字間違いなしな展開な訳です。

    とはいえ、こちらとしてはそれくらい人のいる前でやれた方がやりがいもあるってなもんで。前座だろうが野次られようが構いやしない、「俺たちのやりたい様 にやって思い出作っちゃうんだから!」なんていう気持ちで普通の日々を送っておりました。

    文化祭のプログラム表が全校生徒に配られ、いよいよもって文化祭も近づいてきたな、なんて思いながらステージでの進行表を覗くと、なんと 「Hypocrites」がトリになっていたのです。
    「これは良くない」
    2人とも同じ気持ちでありました。先生達が先にやってしまっては我々が出る頃には体育館が空っぽになってしまう、ガラ空きな体育館で歌うのはリハーサルの 時だけで十分だ。
    すぐに生徒会と文化祭実行委員に掛け合うも「権限がないので」と門前払いを喰らい、こうなったら、と、直接講師室へ殴り込み、順番の変更を申し出たのであ ります。

    「生徒が主役じゃなくてどうすんの?」

    ごもっともなご意見でありました。ごもっともなご意見ではありましたが、現実そんなに魂のこもった連中なんていやしない、だいたいが本来は「文化祭なんか ブッちぎってどっか遊びに行っちゃおうぜ」ってなもんで、人いるの?くらいな可能性だってあるんだから。

    我々の執拗なまでの要望ではありましたが、やはりその「ごもっとも」な意見はあまりにも正し過ぎ、結局我らが「Hypocrites」は、本番を目前にし てビビリになってしまうのでありました。

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