辿り着く先は一体 何処になるのか
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3月31日午前2時過ぎ。僕は独り大広間で手紙を書いていた。宛先は、7年後の自分。
周りには誰もいない。卒業記念にとクラスの何人かで企画された、全員参加のお泊まり会イベントが終わったら、みんなそれぞれ散り散りになっていく事だろ う。 遡ること半日、「何て書こうかな」なんて口々に言い合いながら自分宛ての手紙をみんなが書いている間、僕は外でぼーっとしていた。しんみりしてしまいそう になったから。こうやって独り静かなところでのんびり書いている方がいくらか気分も落ち着くってなもんだ。そう思いながら、書かないままでくしゃくしゃに なってしまった紙をポケットから取り出し、窓から差し込む月明かりだけを頼りに、銀色のペンで少しずつ自分への手紙を書き始めていた。 ふと顔を上げると、もうすぐ会えなくなってしまう中の一人の人が立っていた。いつか想いを伝えなきゃいけないと思っていた人だった。僕は不意に彼女の手を 取り、思い切って窓から抜け出した。玄関はとても重く、開けるには大きな音を伴うからで。 ちょっとした丘の麓に立てられているお泊まり会の会場は、元々が高校の施設で、先生方の講習会や合宿に使われているらしい。景色もそこそこに良く、丘とい うこともあって周りには大きな建物もなく、僕と彼女はそのまま丘の頂上までただ歩き。 4日後には大学の所在地である名古屋へ飛ばなければならなかった僕は、彼女と他愛もない話や高校生活の思い出話に花を咲かせ、気づけば遥か彼方の空がぼん やり紫色に変わりかけていた。 「確実に分かっているのは、4日後に名古屋に行ってしまうことと、あなたを好きだということです」 そう言った僕の冷たい手を、彼女はそっと握り、鳥は僕らをささやかに祝福するかの様に鳴き始め、空は恥ずかしそうなオレンジ色に変わっていた。 PR
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